PRODUCERS | プロデューサー対談

メロネスト創成期

― 経営側というかプロデュース側に回るきっかけは?

山下:自分の場合は、ベース以外にも何だか器用にPAの仕事とか、ちょうどコンピューターでの打ち込み音源制作(DTM)の仕事が増えていく時代だったので、そっちで仕事が結構入るようになって演奏と音源制作の仕事半々っていう感じで、25~27くらいの時からそっちにね。

― 山下さんは、すぐお金の方に行きそうですもんね(笑)

山下:そう(笑)まあ現実的な話で、その当時、彼方此方のメーカーさんが通信カラオケを始める頃で「お前、パソコンできるんだからやってみろ」と。それで、お師匠さんから教わった打込みのノウハウを使ってやってみたら結構出来ちゃって。それで20代はやってましたね。その時は全然会社を経営するなんて考えてなくて、ひたすら日銭稼ぎ。

― へぇー。草野さんの20代は?

草野:僕、すごく遅いんですよ。30まではアマチュアバンドでその夢を捨てきれず、長く引っ張って(笑)それまではもうずっと運送屋。その間にいろんなバンドをやって、入れ替わり立ち代わり。最終的に歌ものバンドやって。

― 本当の意味でプロになったのは?

草野:30過ぎです。ココの電話番をやり始めたのが30歳位。先代がギターアレンジャーで、自分のデモ聞いてもらってボロクソに言われてたけど「作曲やってみれば?」って言ってくれて。その背中を見て先代がアレンジして自分でギター入れる姿とか見て、どんどん吸収しましたね。まともに仕事でギャラ貰ったのが32~33くらい。

― 別の仕事に行っちゃおうとか考えたことは?

草野:大学の時から、「俺は音楽一本で行く」って決めてたから。バンドをやって、30代で出会った人たちによって少し路線が変わったというか。ああ、そういうのもあるのかと影響を受けましたね。

― おとっつぁんたちは?その頃…。

草野:その時はもう、先代も竹内も事務所の人だったんで2人とも。僕もいつのまにか、一緒に先代と立ち上げた初期メンバーになっていて、先代の社長だけが現役のアレンジャーでギタリストっていう変な会社でしたね。

山下:草野は最初に事務所で「スーパー事務員」って言われて。ともかくね、トイレ掃除とか、あらゆることを完璧にこなすんですよ。すごかったよね、いま考えると。

草野:仕事ないんですよ、綺麗にするくらいしか。事務的な仕事があるわけじゃなかったし。単に掃除が上手だっただけで(笑)暇つぶしに掃除して、後はコーヒー入れておくとか、曲作ったりしていいよって言われて。たまにしか鳴らない電話取って。そういう点では感謝してますよ。バイトの時間で曲を作っていいっていう環境だったから。

― 音楽的モチベーションって、どうキープしてたんですか?

草野:人に会って話すると刺激をもらえるし、誰か好きな人のライブに行ったりするとすごくエネルギーをもらえますよね。時間ない時は好きなアーティストの曲を聴く。久々に昔ハマってたの聞くと当時のモチベーションが少しだけ戻ってきたりしますよね(笑)

― なんかないとやってらんない?

草野:そうだと思います。

― やたら飲んじゃうのも?

草野:そうだと思います(笑)

竹内:とりあえず飲んで忘れる、みたいな(笑)

*

それはもう、「届け!お前らに届け!」的な暑苦しさで。

― 暑苦しさって言葉、竹内さんからあったと思うんですけど…。

竹内:熱を伝えたいというか、その人の持つ情熱みたいなものを音楽を通して伝えたい。その人の持っている気持ちが音楽になっているか、そういうのを僕たちは教わってきた世代なので、暑苦しさを伝えることが1番かな?今の子たちはコンピューターから始まってるので熱の伝え方が自分たちとは違うのかな?って思うところがあって。でもライブだとやっぱりアツいから、みんなライブには足を運ぶんだと思うのよね。

山下:ジェネレーションギャップというか、草野なんかはちょうどアナログと両方知ってる世代でしょう?

草野:俺は、そうね、中途半端。入れ替わるのが30代の時だったから。若い子はどんな曲を作ってても、どこかクールっていうか、もちろん熱い気持ちはあるとは思うけど、なんか、かっこいいんですよね、出し方が。こっちは何か泥臭いっていうか(笑)暑苦しいというか。その気持ちの伝え方がバンド上がりのせいなのか、どこか熱いというか「お前ら聞いてくれよ!」「届け!おまえらに届け!」みたいな気持ちでやってきましたね。

草野:最近ライブが盛り上がってるのはやっぱりCDでは伝わってこないものが会場には多分あると思うんですよ。その人たちがいて一所懸命表現しているっていうのが。その暑苦しさというかアーティスト側も出したいものを、そのままお客さんに伝えようとしてる気がします。

― それをプロデューサーとして、世代的に違う人達に伝えるのって難しいコト?

竹内:そうですね。なんか、「昔はよかった」的に思われてしまうと、それまでだけど、昔はそういう風にしないと(みんなで作らないと)、一つの物が、ヒット曲が、楽曲が出来なかったっていうのがあって。一人でやっていると、自分なりの物ができますけど、逆に悩んじゃうんですよね。自分だけで考えるから。昔はバンドのメンバーがいて、それぞれの考えがあって、その中での英知が…。みんなの熱が集まって一つの物が出来上がるという。こんなものができるんだって奇跡のようなことが起きたり予想できないものが出来たり。

山下:社長、もしかして今、英知って?

一同:(笑)

作って、動いて、作って、動く人が残っていく。

― 草野さんから見て若手は?

草野:時代時代の濃さがあると思うので、今の子たちはやり方の熱さをもってると思うんですよ。こっちのやり方を押し付けてもって思うし、僕らも今のやり方を理解しないといけないし、生き残っていけないと思うし(笑)今の子たちはすごくクレバー。

― クレバー?

草野:賢いというか、情報がいっぱいあって一人で完結しやすい環境下にあると思うし、時短にもつながるし費用も掛からないし、けどある程度の物は作れるっていう…。

― 音楽で、残っていくのに必要なことって?

草野:まあ、初歩的だけどまず、自分の音楽をいろんな人に聞いてもらうことですよね。そういう多分、熱量がないと、ひとりでモンモンやって終わっちゃう人もいれば、俺のを聞いてくれ!俺はこれで飯が食いたい!じゃあそういう事務所にデモ出そう!って動く人もいる。

― 行動力?

草野:ものすごく大事だと思います。というか、実際に残ってるというか自分の知っている若い子で今もやってる人達はとにかく動いてます。じっとしてない。作って、動いて、作って、動いて。で、相手の言うことを聞いて、すぐ調べて、どんどん勉強して、本当に今あるコンピューターの機械やソフトをものすごく勉強してますしね。

― フル活用してるわけですね。

草野:音楽に対しての関心と、もっともっと良くしたいっていう気持ちはもちろんあるので、熱さ的には実は、けっこう暑苦しいのかもしれない。

山下:要は、デジタル的なツールを使って、アナログ的な動きもしているから。あちこち行くってそういうことじゃないですか。家の中だけでパソコンいじってるだけじゃなくて、アナログ的な積極性も必要になるから。

草野:今はスタジオじゃなくて、まず最初はメールじゃない?そん中でコンペとか参加して、コンペを取りましたとか。別に体を動かせっていうのではなくて。

― 汗かけばいいってもんじゃないですもんね。

草野:そこも意外と上手にやってたりしますよね。

― 昔の何10倍もできるしね。

草野:そうですね。

― 作ること自体は求心的だけど、外への動きを加えると反復作用が生まれますね。

草野:それは、昔も今も変わらないと思います。やっぱり動いている人が残ります。積極的に動いている人、すぐ一歩を出せる人、誰よりも早く出せる人。

石丸:それは時代じゃないよね。

草野:時代じゃないです、そうだと思います。考えて、悩んで、止まるんじゃなくて、出来たもんだせ!出来たもん出そう!!って感じ。そうしたら反応あるかもしれないし。考えてるだけじゃ、反応はないし、動いて初めて反応があるわけだから。

― 山下さんなんか、動きまわりそう。

山下:まあ、後先考えずに行っちゃうっていうのはあるかな?自分はね。それで撃沈。

草野:それでも行かないとね、撃沈もね。何かをつかめるかもわかんないからね。俺はその辺は、この人すごいなぁと思うんですよ。良くも悪くも(笑)会社的にはすごく、良いことですよ。

草野:動かないと、大問題も仕事も持ってくることはできないから。

― 撃沈モードでも行っちゃう?

山下:やっぱり、知らない人に会って考えを吸収したいっていうか、いろいろ知りたいというか。最初から何か音楽の仕事をくださいって行くわけじゃなくて、流れの中でね。

― 話は変わって、辞めちゃう人とかも…?

草野:いますよ、もちろん。若い作家でも最初は「頑張ります~」って、曲とかバンバン出してくるんですけど、そのうちだんだん数が減りフェードアウトしていく人も。

― 手数が減ってくる?

草野:減ってきます。

― 年齢的なもの?

竹内:うーん、やっぱり30くらいになってくると勢いだけじゃやってけないなというか、それまでこう、がむしゃらに作ってキマっていったりしても、だんだんそれがキマまらなくなると厳しくなりますよね。そこで、みんな一度悩んで、すぱっと辞めちゃう子もいるし、サラリーマンとか他の仕事をしながら続ける子もいるし。

― 音楽で食べてくのって、大変な確率でしょ?

草野:大変な確率です(笑)簡単にまず、一発出せたとしてもね…。要するに、作家デビュー的なことはしやすい環境ですけど、それがまず継続できるかできないか。

― 作家デビューはできるけど、2発目が行けるかどうか?

山下:プロとアマの垣根っていうのは割とあいまいで、昨日までアマでやっていた人が何かでポーンと当たると。あとは続くかどうかですよね。

竹内:実力となるか。

― さっき言ってた「作って、出して」っていうこと?

竹内:それを含めた勉強ですよね、やっぱり。

草野:曲づくりだけだと、その後がダメだと、大変だと思うんですよ。食えないですよ。1~2年は食えるけど(笑)プラスやっぱり、アレンジ的な部分、アレンジャーとして実力や厚みが出てくると、作家的な部分と印税的な部分、アレンジャーはとっ払いなので、両方でうまくバランスを取りつつ、徐々に成長しながら続けられると思うんですけど。正直、曲だけっていうのは今の時代は厳しい。パートナーがいればまた違うのかもしれないけど。先ほどの、みんなでアイディアを出して~っていうのは、いいのができる場合もあると思うんですけどね。

*

作家として、社会人として、会社のヒトとして。

― さっき、プロで続けていく話があったじゃないですか。手数を多くして、勉強していくっていう。イメージでいうと、厚みを増していくってことなの?

草野:ゲームで言えば旅をしていって、この武器を手に入れた!みたいなのと一緒な気がするんですね、動かなければ何も手に入らないというか、宝物が見つけられない。動き回るからここに宝物があった、こっちには武器があったってなる。

― アイテムを掴んでいくみたいな?

草野:「草野、アレンジの仕事をとった、そこで何かを勉強した、初めてだけど担当した、次の機材を買うにはあと何歩、歩かなきゃいけない」みたいな感じ、ドラクエとかって。あれって結構、人生そのもののような気がする(笑)

― ロールプレイングゲームね。

草野:まさにそう、動かなきゃ何も取っていけないというか装備されていかないし、厚みが増さないですよね。人間の生きる力のポイントも増えていかないし。でも、そのポイントに偏りすぎると、こっちには強いけどあっちには弱いとかね。そっちに秀でて強いっていうのも一つの強さだとは思うんですけど。そっちで行ける人は。完全にミュージシャン、プレーヤー的な人で、まさにそこだけ勝負!みたいな。

― なるほど、旅に出て摩擦を起こせと。

草野:そうですね、本当にそう。失敗とか恐れず人に会うこと自体も経験、ひとつの経験ですよね。こうやって話をすること自体、僕にとっては一つの経験で、何が武器になるかはわからないけど一つ勉強したような気にもなりますし。

― 表現についての話ですが、広告の世界でもクリエイティブが予定調和的になる傾向があって…。

山下:同じですよね。

草野:そうですね。石丸さんの方のサウンドデザイン的な音楽は、作家の個性がすごく活きているような気がするんですよね。もちろん、お客さんに合わせなきゃいけないっていうのはあると思うけど。

石丸:ちょっと仕事の分野が違いますけど僕の場合はクライアントがいて、そのすぐ下に僕がいて作家さんがいて。まず自分の中で、ここはこういうデザインにしたいっていうのがあるので、そこをまずお客さんに絶対納得してもらうための提案をしますね。僕が一番嫌いなのって「どうすればいいですか?」「どうすれば答えが出せるんですか?」「どういったものを作れば100点になりますか?」って聞いてくる作家さん。「じゃ、こうして」って言って出てきたものが、本人は100点だと思っても大概、70点とか80点なのね。そういうのは、やっぱり正直言ってつまんない。僕だって、こんなふうにって言いたくないのに…。(笑)

草野:逆にチャレンジし過ぎちゃったりね…(笑)

石丸:「こうは、どうかな?」って感じで、作家として、アーティストとして自分の個性をプラスしてくれる人。みんなが感動する結果を出すには、そういったものが必要かな。だからこそ職業作家とアーティストがいつも交差して、作家がどうしたらいいんだろう?と迷った時に、そこをピシーッと言うのが我々の役目だと思いますね。

草野:そうですね~。

次ページ:スゴイ作品には、ありそうで、実はない、何かがある。

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